みつねの場合

鏡に向かって、念入りに髪形をチェックする。
「変、じゃない……よな?」
いつもと同じポニーテールだけど、なんでかいつも以上に気にかかる。


「リボン……つけてみようかな」
去年買って、結局仕舞いこんだままの赤いリボン。
自分には合わないと思いながら、手にとってみる。
「う〜……やっぱり、こう言うのは私のキャラじゃない、よなぁ〜」
合わせて見て、似合わなさにちょっとだけ落ち込んだ。


「そ、そもそもクリスマスだからって特別な事なんてないし」
そう言いながらも買ってしまったプレゼントの包みに目をやる。
「渡せる……かな」
想う相手に、素直に……。
それが出来そうになくて、少し悲しくなった。

ヴィアの場合

騒がしいのは好きじゃないし、出来れば一人で部屋に篭っていたい。
クリスマスだろうと、そう思うのは変わらない。
祝い事をする習慣が幼い頃からあれば、そうも思わなかったかもしれないけれど。
子供の頃のクリスマスなんて最悪の思い出しかないから、出来れば忘れてしまいたい。


もはや爆音にも近いキッチンからの音を聞いていると、ため息がもれる。
「お師匠は言い出した聞かないからね」
あの人に拾われてからというもの、何かがある度にパーティーを催すことになっている気がした。


「今年のケーキは……爆発しないといいのだけど」
去年のクリスマスを思い出したら、何故だか少しだけ、パーティーが楽しみになった。