SSS

今日もまたニンゲンがくる。 何をするでもなく、私の話を聞いて、怪我の具合を聞いて、去っていく。 あいつは何が目当てなのだろう? 私を懐柔して、なついたところで毛を剥ぐ気なのかもしれない。 私を懐柔して、見世物小屋に連れて行く気なのかもしれない。…

ヴィアの場合

騒がしいのは好きじゃないし、出来れば一人で部屋に篭っていたい。 クリスマスだろうと、そう思うのは変わらない。 祝い事をする習慣が幼い頃からあれば、そうも思わなかったかもしれないけれど。 子供の頃のクリスマスなんて最悪の思い出しかないから、出来…

みつねの場合

鏡に向かって、念入りに髪形をチェックする。 「変、じゃない……よな?」 いつもと同じポニーテールだけど、なんでかいつも以上に気にかかる。 「リボン……つけてみようかな」 去年買って、結局仕舞いこんだままの赤いリボン。 自分には合わないと思いながら、…

マルティの場合

「……さて」 いつもよりも多めの食材。 いつも以上に気合を入れて。 「年に一度の事ですからね」 喜んでもらえるように、特別の料理をつくりたい。

白蛇の場合

街を楽しそうにかけている兄妹を見た。 プレゼントの事、サンタの事、ケーキやご馳走の事をすごく楽しそうに話していた。 そこに母親がやってきて、すごく楽しそうに歩いて行った。 「うらヤまシいナァ」 自然と言葉がこぼれていた。 「なんだ? あの親子ず…

風の場合

昨日から、ラボの人があんまりいない。 いつもあんまり見ないけど、気配を感じないから……きっといないんだと思う。 よくわからないけど、寒くなると人がいなくなる時期がある。 たぶん、それがはじまってる。 じゃあ、きっと……こない……のね。 これが、寂しい…

シュナの場合

今日はこのあとファタエの所へ行こう。 その前に、街で花束を買って……クリスマスだから、いつもよりも大きい物が良いだろうか。 それと何か、彼女が喜びそうな物を買って行こう。 今日は、ずっとファタエの所にいよう。 本当はずっとそばについていたいけれ…

ひとまろの場合

「くりすます……って今日だっけ?」 カバンからノートを取り出しながら、ひとりやたらと盛り上がっているにえに問い掛ける。 「今日はイブやー」 にえがすごく楽しそうにそう答えた。 「そっかー…」 なんか街中が賑やかだし、赤と緑に溢れてるとは思ってたけ…

せんせいとせいと

「先生、デートしましょ?」 いきなりすぎる言葉に、思わず眼鏡もずり落ちた。 「な、何言ってんだ、教師をからかうもンじゃないぞー」 「からかってもないし、冗談でもないですー」 「そう言うもんは、同級生としてきなさい」 そう言って、少しだけ胸の奥が…

ヴィアと白蛇

「ねぇ、ヴィア」 甘ったるい猫なで声。 後ろから優しく絞めるように、首にまわされた腕。 「なんだい?」 ヴィアは本を読む手を止めることなく、面倒くさそうに答える。 「ヴィアって、ヒドい人だヨね」 「いきなりなんだい」 「なんトナく、ソウ思ったカら…

ヴィア:世界の有様

球に映る世界。 そこにあるのはいつも、幼い頃に思い描いていたもの。 けれどもそれが世界ではない無い事を、今は知っている。 「またそんなもんを覗きこんで、楽しいのか?」 「さあ、どうでしょうね?」 コレは…いわば習慣的な事で、楽しいのかなんて自分…

ディース:極彩色に染まった部屋

「まずい。不味いぞ……。これは絶対にまずい。」 極彩色に染まりあがった自室を眺めて、呟く。 「ははは、腐海もビックリじゃな〜」 自嘲気味に笑ってみるが、そんな場合ではないことは重々承知。 そう言ったところで、自体が解決するなんてことはけしてない…

嫌になるほどの赤

落ちていく夕日が、何もかもを赤く染めている。 「嫌な色」 アルザが思わずそう呟いた。 「そうですか?」 近くにいたシュナにはその声が聞こえたのだろう。 「私は美しいと思います」 血のように紅くてね、とシュナは続けた。 にやっと口の端を歪め、さも馬…